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は、だれが教えてくれるものではなく、自分なりに模索し、見出していくしかなく、もちろん金で手に入れることもできません。いやむしろ金銭がいかにそれを阻害するか、ということを見てきたのでした。
金銭それ自体は“便利な道具”であって、それを罪悪視し嫌う必要はないのですが、あまりに便利すぎ、あまりにたやすく人生の価値基準に化けてしまい、その結果、人がその奴隷になってしまう、つまりこちらの人間性をゆがめ、本来の“自分らしさ”を失わせてしまう危険をはらんでいる、ということです。
そういった金の魔力に足をすくわれないためにも、日常のどこかに、金銭勘定にまみれない、人間らしさの息吹を通わせる換気口を開けておく必要があります。そこから吹き込む新鮮な“風”(ギリシア語、ヘブライ語では“霊”“息”と同じ意味です)を深呼吸することで“自分らしさ”がよみがえり、生活全体がいきいきしてくるのです。代償を求めず、全人格的なかかわりへと自分を開いていくボランティア活動こそ、日常生活に新鮮な息吹をふきこむ、そんな“風穴”(ウインドウ=窓)でもあるのです。
ですから、ボランティアが代償を求めない、ということは、「無料でけっこうです」というのではなく、「人間、金だけじゃないよね」ということの自己確認なわけです。“金銭的価値”とは無縁の“人間的価値”を回復し実践するなかで、陽に当てられた布団のように、ふわふわと“自分らしさ”が息を吹き返してくるのです。
“自分らしさ”は一人ひとりの個性に応じて千差万別ですが、わたしたちが人間である以上、“人間らしさ”という万人共通の土台に根差しています。さて、わたしたちのルーツである、その“人間らしさ”とは、どんなものでしょうか。それを次に考えて

 

 

 

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